人間関係とその距離感というのは永遠の悩みなのではないでしょうか?
「夫婦」、「恋人」、「上司と部下」との距離感。
近づきすぎても、遠すぎても上手くいかないものです。
ここではドイツの哲学者ショーペンハウアーの寓話『ヤマアラシのジレンマ』とリンクさせ、人間関係の距離感の取り方を紹介します。
目次
ヤマアラシのジレンマ
ヤマアラシのジレンマという寓話を聞いたことはありますか?
人間関係の距離感を寓話として、わかりやすく説明しています。
それでは、あらすじへ。
あらすじ
ある冬の寒い日に、ヤマアラシたちがお互いの体を寄せ合って暖をとろうと群をなして集まりました。しかし、お互いのトゲが刺さりあってしまうため、離れざるを得なくなってしまいました。
再び寒さがヤマアラシたちを襲いました。
ヤマアラシたちは寒さに耐えられなくなり、近づきますが、やはりトゲが痛くて離れてしまいます。
近づく離れるを繰り返して、互いに多少の距離を保つのが一番良い方法だと学び、その距離を保ち続けました。
ヤマアラシとは
ヤマアラシは、ネズミ目ヤマアラシ科に属する草食性の齧歯動物です。
特徴は体の側面と背面の一部に三万本もの鋭いトゲをもち、天敵から身を守ります。
実際のヤマアラシは
しかし、実際のヤマアラシは側面と背面のトゲを閉じて横並びなり、トゲの無い頭部を寄せ合い暖をとっています。なので、「ヤマアラシはジレンマを感じない」、「ヤマアラシのジレンマは嘘だ」と言う方もいるでしょう。
しかし、寓話とは動物同士が会話をしたり、人の考え方をしたりして現実世界とは違う世界と考えられるので、ヤマアラシがジレンマを感じても良いのではないでしょうか。
自己の自立と相手との一体感
ヤマアラシのジレンマの教訓は『自己の自立』と『相手との一体感』、つまりは『相手に依存しすぎても良くないし、自己中心的過ぎても良くない』ということです。
ヤマアラシのジレンマは、この二つの相対する教訓のジレンマを表しています。
人とヤマアラシの関係
このヤマアラシのジレンマに出てくるヤマアラシたちは、そのまま人に置き換えられます。
人は社会の中で様々なコミュニティの中で過ごしています。
しかし、人間関係の距離感がわかっていないと、そのコミュニティの中で多くのトゲ„や互いの性格の不一致によって不快を感じてしまいます。
この寓話の作者のショーペンハウアーは、「結局、交流において許容できるような最適の距離感は礼儀作法やマナーで発見できる。そして礼儀作法やマナーを守ることによって、初めて互いに暖をとる必要が適度に満たされ、互いの針で刺されることも無くなる」と言っています。
礼儀作法やマナーのように、一定の取り決めがあるからこそ相手を傷つけずに済むのです。
パーソナルスペース
人間関係の距離感を測る際に重要となるのが『パーソナルスペース』です。
パーソナルスペースとは
パーソナルスペースとは、『他人が自分に近づくことをができる限界範囲』つまり、自分自身の縄張りのようなものです。人は気づかないうちに自信の周りにパーソナルスペースを作って、自身を守ろうとしています。
なので、スペース内を特定の人以外に侵されると違和感や不快感を感じてしまいます。
このスペースは、小さい頃はとても小さいものですが、大人になるにつれてつくられた性格や人生経験、相手との関係などで人それぞれ大きさが異なり、親密な相手には狭く、敵視している相手には広くなります。
パーソナルスペースの分類
パーソナルスペースをアメリカの文化人類学者のエドワード・T・ホールが4つのゾーンに分け、なおかつ1つ1つのゾーンを「近接相」と「遠方相」に分類しています。
この分類を参考に相手との距離感を考えていきましょう.
公共距離
遠方相(7m)
近接相(3.5~7m以上)
4分類の中で最も広い距離に設定されており、自分対複数の相手が存在する空間です。
遠方相が7m以上なので会話もしたくない・する気もない相手、つまり「完全に他人」「嫌いな相手」「苦手な相手」または、「職場の重役」や「その他要人」にこの距離をとります。
遠方相より少しは興味がある近接相でさえ3.5mなので、親しく会話をするには遠すぎます。ですので、この距離を設定するということは個人的な仲ではなく、あくまでも公共的な仲と感じているということです。
社会距離
遠方相(2~3.5m)
近接相(1.2~2m)
この距離は公共距離よりも少し短くなります。短くなると言っても、最低で1.2mなので「職場の同僚」や「取引相手」など公的に話さなければならないときに設定する距離です。
もし相手がこの距離を設定してきたら、「積極的には話そうとは思わないけど関係維持のため話しておこう」と思われている可能性があります。
個体距離
遠方相(75~120㎝)
近接相(45~75㎝)
この距離は相手の表情を読み取れるところまで近付ける心を許している「友人」との距離です。
この距離からは相手のパーソナルスペースに随分踏み込んでいますので自分の距離感を誤ってしまうと相手に不快な思いをさせてしまう可能性大です。
自分は親しい仲だと思っていても相手はそうは思っていなかったということもありますので慎重に距離を計測しましょう。
密接距離
遠方相(15~45㎝)
近接相(0~15㎝)
遠方相の距離では、体には簡単には触れられないが、手と手は触れ合うことが許される距離です。
近接相の距離では、お互い抱きしめられる距離です。
この距離は、友人や家族でも許されない特定な人物のみ許される領域なので、おいそれと入っていくことも侵されることもないです。
たまに、遠方相まで近づいてくる親しくない人もいますが、完全に距離を見誤っています。さすがに踏み込み過ぎなので直接言ってあげても良いかもしれません。
まとめ
たとえ恋人同士や友人、家族であっても、人それぞれのパーソナルスペースが存在します。人はこのスペースを侵されるのをとても嫌うため、慎重に測らなければトラブルに発展してしまいます。
パーソナルスペースの分類を参考に、ヤマアラシのように近づいたり、遠ざかったりして適切な距離感を保ってください。
いきなり個体距離や密接距離には入れないのでだんだん距離を狭める必要がある。