自分のことを理解してもらえない”くも”の苦悩【絵本考察】MISS SPIDER’S TEA PARTY(ミス・スパイダーのティーパーティー)

「あたしは いつも ひとりぼっち」

ミス・スパイダーは 涙ぐみました。
目頭をおさえ、そっとため息。

「だあれも 友達に なってくれない」

涙のつぶが ポタポタと
銀のお盆に おちました。

 

ミス・スパイダーのティーパーティーより

 

あなたには、思い出の絵本はありますか?

ぴえ郎は、DAVID KIRK(デビッド・カーク)の『MISS SPIDERS TEA PARTY(ミス・スパイダーのティーパーティー』です。

もっと車とか恐竜とかカッコいいのあっただろ!ってツッコミたくなりますが、この絵本が大好きでした。

絵本紹介

発行日:1996年11月15日 第1刷発行

著者:DAVID KIRK(デビッド・カーク)

イラスト:DAVID KIRK(デビッド・カーク)

訳:岩田裕子

発行所:株式会社日本ヴォーグ社

ページ数:全18ページ

DAVID KIRK(デビッド・カーク)とは

アメリカ・オハイオ州中部育ち。

MISS SPIDERS TEA PARTY(ミス・スパイダーのティーパーティー)はデビット・カークの絵本処女作で娘のバイオレットのために作られました。

本来の専門は、子ども向けおもちゃ作りやアート制作、玩具メーカーのオーナー兼、クリエイティブ・ディレクターとして活躍している。

※絵本の著者紹介より

ぴえ郎的感想

なんといっても表紙挿絵のインパクトのあるイラスト!

優しく柔らかい印象の色遣い!

そして、数え歌になっているテンポの良いストーリー!

ぜひ、読んでほしい一冊です。

この先にあらすじやネタバレ要素が含まれます。

新鮮な気持ちで読んでから考察を見たいという方は先に購入してから読んでみてください。

 

今回はこの本を大人向けに紹介・考察し、大人にもなにか感じ取っていただけたらと思っています。

では、早速あらすじヘ。

あらすじ

一人ぼっちのお茶と花しか口にしないくも、ミス・スパイダー。

「私は友達がほしいだけ。ティーパーティーに招待して、いろいろなおしゃべりをしたいだけなのに。

虫たちは、私を見ると、みーんな逃げていってしまう」

 

かわいそうなくもは、まったく気づいていないのです。虫たちが彼女に「食べられてしまうんじゃないか」とこわがっていることを。

 

ミス・スパイダーは根気よくカブトムシやマルハナバチ、アリ、ちょうちょたちをティーパーティーに招待します。

しかし、虫たちは逃げていくか、

「くもなんかとお茶をするほど、バカでも、まぬけでもありませんわ」

と去って行ってしまいます。

 

そんな雨の降るある日、9匹のガが雨宿りをしているのを見つけたミス・スパイダーはティーパーティに招待するために近づいていった途端、ガたちは死にものぐるいで逃げていってしまいました。

 

「あたしはいつもひとりぼっち」とミス・スパイダーは涙ぐんでしまいました。

 

そこに雨に濡れて飛べなくなった一匹のガを見つけました。

ミス・スパイダーはチェックのクロスでガをつつんであげ、羽が乾くまでパイと紅茶を出しおしゃべりを楽しみました。

 

その後、その出来事が虫から虫へ伝わりました。

 

「ミス・スパイダーはこわくない。ぼくたちを食べたりしないんだ」

 

今では、ミス・スパイダーのところにはいろいろな虫たちが紅茶を飲みに訪れるようになりました。

※本文全てではありません。

思い込み

ミス・スパイダーは、花とお茶しか口にしないくもです。

そんな特殊な個性のクモのことを登場する虫たちは一匹も知らなかったということは、誰もミス・スパイダーのことを詳しく知らず、ましてや話をしたことがないということがわかります。

ではなぜ虫たちはよく知らないミス・スパイダーのお茶会を断ったのか?

それは、11匹の虫たちはクモという存在に対して、『怖い』・『敵』・『罠』というイメージを抱いていたからです。

しかし、なんで詳しく知らず、話もしたことがないクモに対してネガティブなイメージを抱いていたのか?

これは、内的要因外的要因が関係しています。

内的要因と外的要因

内的要因とは、『行動の結果は、本能や性格などの内的なものが原因である』という考え方です。


今回の場合でいうと、虫たちは本能的に「クモは危険だ」と遺伝子に書き込まれていたのがクモに対してネガティブなイメージがついてしまった原因である。

となります。

 

外的要因とは、『行動の結果は、周囲の状況や他者からの影響などの外的なものが原因である』という考え方です。


こちらは、虫たちは親などの他者からのネガティブな情報によって、クモに対してネガティブなイメージがついてしまった原因である。

となります。

みなさんの身近にもいませんか?

「あの人は、悪い噂がたくさんあるから、意地悪な人に違いない。だから近づかない方がいいよ。」

「あいつのこの前の行動は常識を弁えてない。あんな非常識な人間とは会話しない方がいい。」

と自分の悪いイメージを相手に植え付けようとする人。

・・・いますよねー(汗

完全に虫たちの立場ですね!

逆に、
「あの人とあいさつを交わした程度しか接していないのに避けられている。嫌われているのかな?」

なんてこと思ったことはないですか?

完全にミス・スパイダーの立場です。
誰かに自分のネガティブイメージを言いふらされているかもしれません!

恐ろしい限りです・・・

このイメージという言葉は厄介で、人や物に対して一度でもネガティブイメージを思い込んでしまうと抜け出すことがとても困難なんです。

カラーバス効果

人は、一日に膨大な情報を受けとって生きています。

その多くの情報をすべて処理をしていたら脳がパンクしてしまいます。

そこで脳は、『いる情報』と『いらない情報』とを仕分けして、いる情報のみ処理をしています。

この仕分け作業に影響を与えるものが心理用語で【カラーバス効果】と言われているものがあります。

カラーバス効果とは、自分が意識していることが情報として入ってくる現象のことをいいます。

例えば、朝起きてテレビをつけたら星座占いで自分の星座が最下位だった。
しかし、

「でも大丈夫!赤色のものに運気アップのチャンスが!ラッキーカラーは赤!」

なんて聞いたら出かけた先々で意識していなくてもいつもより赤色のものに目を奪われてしまう。

これがカラーバス効果です。

ネガティブイメージとカラーバス効果

このカラーバス効果は、ネガティブ方向にも効果を表します。

ネガティブイメージがある人に対してネガティブイメージを意識しているが故に、その人のネガティブな情報を集めやすくなってしまいます

この効果も相まって、虫たちにいろいろなアプローチをしていたミス・スパイダーもネガティブイメージがネガティブイメージをよんで、身動きが取れなくなってしまい涙を流してしまいました。

そんな物語の虫たちのように間違ったネガティブイメージを抱いてしまい失敗しないために、気をつけなくてはならないことは、

根底の自分の思い込んでいるネガティブイメージは誰からの情報なのかを確かめ、なぜそう思ったのかを考え直す。

ということです。

後になって考えてみたら一時の感情が左右していただけでカラーバス効果によって悪い部分だけ見えていただけなんてことも大いにありますからね。

感情表現

この絵本のイラストの虫たちはとても表情豊かに描かれています。

文を読まなくてもその虫が、「喜んでいる」のか「怒っている」のか「悲しんでいる」のか「楽しんでいる」のかはっきり読み取ることができます。

しかし、表情以外で虫たちの感情を読み取ることができます。

その方法は、イラストの構図です。

この絵本のイラストは、『ミス・スパイダー目線』『虫たち目線』のどちらかの立場目線によって描かれています。

まず、ミス・スパイダー目線のイラストは、

笑顔のミス・スパイダーがキラキラしたきれいな風景の中におり、ミス・スパイダーの優しさと純粋さが見て取れます。そして、他の虫たちも笑顔で穏やかな表情で描かれているため、他の虫に対しても良いイメージであることがわかります。

それに比べて虫たち目線のイラストは、

全体的に暗い印象で虫たちは驚いていたり、怒っていたり、日常的とは言い難い表情をしています。このことからミス・スパイダーに対して敵対意識があることが読み取れます。また、ミス・スパイダーが影の中にいたり、背景に雷が落ちていたりとミス・スパイダーに対して恐怖心や不信感があることがわかります。

しかし、だんだんと虫たち目線のイラストも明るさが出てきて表情も豊かになっていき、虫たちの心境の変化がわかるように描かれています。

他者の表情を読む能力は一歳にならない赤ちゃんの頃から発達しだし、多くの表情を観察することによって学習していきます。

小さい頃にいろいろな表情やその変化をわかりやすく見せることによって表情を読み取る力を鍛えてほしいという思いが込められているのかもしれません。

個人と全体

物語が進むにつれて変化していくのは虫たちの表情や構図だけではありません。

それは、

虫たちが呼ぶ、ミス・スパイダーの呼び方です。

虫たちがミス・スパイダーのことを怖がっているときの呼び方は『くも』で統一されています。

しかし、仲が良くなった後では『ミス・スパイダー』と名前で呼ぶようになっています。

これはつまり、最初はミス・スパイダー個人のことを言っていたわけではなく、くもという種類の昆虫全体を指して言っていたのが、仲良くなって虫たちの感情が変化し、自然とくもという種類の昆虫の中からミス・スパイダーという個人の名前を呼ぶようになった。
ということです。

この名前を言うということはとても重要なことで、呼ばれ方ひとつで自分のことをどれほど重要で濃い存在であるか推測することができます。

例えば呼び方が、「先輩」⇒「〇〇先輩」⇒「〇〇さん」に変化していったとします。

このとき、どんな感情の変化があるでしょうか?

これは、第三者に話した場合を考えるとわかりやすいです。

第三者に、

「先輩がこの前・・・」と言った場合、「どの先輩?」と返答がくるのが当然ですよね?

先輩だけでは先輩のなかでどの先輩のことなのか特定できないですもんね(汗

「どこに住んでるの?」という質問に「日本!」と答えるくらいに大雑把な呼び方です。

次に「〇〇先輩がこの前・・・」と言った場合、先輩の中の〇〇先輩のことだとわかります。

しかし、まだ「日本の東京!」レベルの呼び方です。

最後に、「〇〇さんがこの前・・・」と言った場合、全人類の中の〇〇さんのことだとわかります。

この呼び方は、「東京の原宿!」レベルの相当ピンポイントの呼び方です。

これがその人固有のあだ名になると番地までつくピンポイントさになります。

このように呼び方ひとつで重要度が変わり、相手へ与える印象も変わってしまいます。

あとがき

どうだったでしょうか?

ウチの生後7カ月の怪獣は、この絵本の鮮やかな色使いとインパクトのあるイラストをよく見て触っています。まだ、ストーリーは理解できないですが、いつか読み聞かせをしてあげたいとわくわくしています。

 

最初にも説明しましたが、あとがきは本文通りではありません。

本文は数え歌のようになっており、読みやすくわかりやすい内容となっています。

実はミス・スパイダーへのネガティブイメージは外的要因が大きく関係していることがわかる文が絵本の最後の最後に隠されています。

そして、よくよく見てみるとデビット・カークもイラストの中にちゃっかり隠れていたりして・・・

本文を読んでみたい方はぜひ買って読んでみてください。

今回は、DAVID KIRK(デビッド・カーク)の『MISS SPIDERS TEA PARTY(ミス・スパイダーのティーパーティー)を紹介・考察しました。

違うミス・スパイダーシリーズもあります。

 

最後まで読んでいただきありがとうございました。

 

 

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